はじめに
海外では、リベラルスタディーズが「学位」や「専攻」として設計されている例があり、国内の議論を整理する上でも重要な参照点となります。
本記事では、リベラルアーツとの連続性と違いを、制度設計・学位構造の観点から整理します。
Liberal ArtsとLiberal Studiesの基本的な違い
Liberal Artsは「教養の体系」
一般に、Liberal Arts(リベラルアーツ)は、人文・社会・自然科学などからなる広範な教養体系を指します。
専門職教育と対置される形で、「幅広く学ぶこと」自体に価値を置く伝統的な枠組みです。
Liberal Studiesは「統合の設計」
一方、Liberal Studiesは、分野横断的な学びを前提にしつつ、分野間のつながり(connections)をどのように統合するかに重点が置かれます。
協会としては、この違いを
「何を学ぶか」ではなく「どう統合するか」
という視点で捉えると整理しやすいと考えています。
学位プログラムとしての特徴
柔軟性と学際性
海外のリベラルスタディーズ系プログラムには、次のような特徴が見られます。
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複数領域を組み合わせて学ぶ(interdisciplinary / multidisciplinary)
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学習者の関心やキャリアと接続しやすい柔軟な履修設計
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キャップストーン(集大成プロジェクト)による統合的評価
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成人学習者の学び直しと相性のよい構造
重要なのは、「自由=なんでもあり」ではないという点です。
多くのプログラムでは、到達目標や評価基準が明確に設定されています。
キャリアとの関係:移転可能スキルという視点
専門の代替ではなく補完
「リベラルスタディーズは役に立たない」という批判は根強く存在します。
一方、海外では次のような移転可能スキル(transferable skills)の観点から評価される議論もあります。
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コミュニケーション
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分析・統合
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倫理的判断
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学際的協働
協会としては、就職に直結する単一スキルと、長期的に社会の変化に耐える判断力・統合力を対立ではなく補完関係として捉えることが重要だと整理しています。
こうした能力観は、OECDが議論するコンピテンシー概念とも重なります。
国際評価との接続については、「PISA・OECD文脈との接続」をご覧ください。
まとめ
海外大学のリベラルスタディーズは、リベラルアーツの伝統を参照しつつ、現代的課題に応答する形で「統合の設計」を前面に出している点が特徴です。
次の記事では、こうした議論を国際比較の文脈(PISA・OECD)とどのように接続できるかを整理します。
本記事では、海外大学におけるリベラルスタディーズが、リベラルアーツの伝統を踏まえながらも、学際的な統合や学位設計を重視する形で制度化されていることを整理しました。
こうした海外の動向は、大学教育にとどまらず、国際的な学力観・能力観の変化とも深く関係しています。
次の記事では、PISAやOECDが提示してきた「知識の活用」「コンピテンシー」「判断力」といった枠組みと、リベラルスタディーズの考え方がどのように接続しうるのかを、国際比較の文脈から整理します。
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